かつての公害大国・日本を救った技術が、 中国の大気汚染低減に貢献する

ダイヤモンドオンライン 「とてつもない中国」
2008年11月26日
中国の政府系ファンドである中国投資有限責任公司(CIC)がAIG傘下の生命保険会社、米アリコの株式を最大49%取得することが注目されている。すでにCICは米モルガン・スタンレーに50億米ドル、持ち株比率9.9%を出資しているが、中国は金融危機をマイナスではなく、米国への投資のチャンスととらえている。
 対外投資が急増する背景には、オバマ氏が大統領に選ばれたことがある。次期政権で人民元切り上げ圧力が高まることを懸念し、外貨準備高を減少させたい、その一環だと考えられる。今後、ますます中国企業は世界市場に本格的に進出していくだろう。中国企業による欧米企業の買収や合弁が進めば、今度は、高い技術を持っている日本企業に対する買収が増えていくことが予想される。
 中国の産業構造が輸出依存型であるのは日本と同じだが、日本よりも中国のほうが、国内市場拡大への期待値は高い。特に、今後成長が見込める分野として、内外の企業が注目しているのが環境ビジネスである。
旧式発電所の公害削減で成功したチャイナボーチー
 中国系企業チャイナボーチーが東証一部に上場したことは、記憶に新しいと思う。「チャイナボーチー(チャイナ・ボーチー・エンバイロメンタル・ソリューションズ・テクノロジー・ホールディング・カンパニー・リミテッド(中国博奇)」が東証に上場したのは2007年8月8日、公開価格は16万円、初値は27万6000円。売買単位は1株である。
 しかし、株式銘柄としての認知はあっても、その企業概要を知っている人は少ない。この会社は中国の排煙脱硫、脱硝など環境保護ソリューションを行っており、石炭を燃料とする火力発電に排煙脱硫・脱硝システムおよび水処理システムの設置をしている。つまり、中国の環境問題の最大のテーマである旧式火力発電所の問題解決に関わっているのである。
 中国が二酸化硫黄(SO2)の排出量で世界最大となっている最大の原因は、石炭から電力をつくる火力発電所がいまだに多数存在することにある。日本でも昭和30~40年代に、発電所や工場で大量に石油や石炭を燃やしたことで、大気汚染が一気に進んだ。
 二酸化硫黄などの硫黄酸化物(SOx)は、石炭など硫黄分が含まれる化石燃料が燃焼するときに発生する。SOxは大気中で硫酸に変わり、これが酸性雨の原因であるといわれている。旧式の火力発電所から排出されるこうした公害が、今中国では大問題になっている。
 SOxの排出を減らす手段としては、硫黄分を取り除く燃料脱硫や、燃焼ガスから硫黄酸化物を取り除く排煙脱硫がある。発電所の排煙から硫黄酸化物を取り除く、その排煙脱硫装置を製造・販売しているのがチャイナボーチーである。
 具体的な事業としては、硫黄酸化物(SOx)を除去するための、排煙脱硫システムの設計、建設、設置や、アフターサービスを行っている。この技術は、もともとは川崎重工業からの供与によるもので、2005年にカワサキプラントシステムズが分社して今も契約を継承している。
 発電所の排煙から硫黄酸化物を取り除く排煙脱硫装置は、日本でも過去に環境破壊が進んだ時期に導入され、大気汚染の改善に役立った技術だ。日本ではすでに新型の火力発電所へ移行したため、近年は使われなくなった。日本市場では需要の無くなった技術を、比較的低コストで中国に導入したという形になる。日本の技術が、中国の社会問題解決に貢献した好例といえるだろう。
多くの日本企業が中国で地道な貢献
 上海で富士通をはじめ大手の日系企業を取材すると、半数以上が、地域社会活動や環境対策など社会貢献活動に取り組んでいる。同じ日本企業でも、日本国内よりも、中国現地のほうが、CSR(企業の社会貢献) への意識ははるかに高い。
 例えば四川大地震やSARSなどへの見舞金、現地の小学校への寄贈、植林など環境への取り組みなどである。もちろん背景には、自社の好感度を高めることや、知名度アップがある。13億人のうち7億以上が貧しい農民である中国では、テレビなどでのマス広告は効果がない。たとえば奨学金を提供するなどの地道な活動を通して、いかに身近に中国庶民に接し、日本企業の評判を上げるかが勝負である。
 環境への取り組みは目に見えづらく、成果を上げるまでに時間がかかるため、評価を得るのは非常に難しい。また環境問題の場合、抜本的に構造を解決しなければ早期改善は見込めない。中国の多くの企業は、財政難に陥っている地方に存在している。それらの企業が公害規制に違反しても、地方政府はペナルティを課すよりも賄賂をもらい目をつぶることが多い。企業が倒産して税金を落としてくれなければますます地方財政は落ち込み、地方政府の役人の出世が閉ざされてしまうからだ。
 中国にいると日常的に誰もが実感せざるを得ない環境問題だが、社会貢献としてもビジネスとしても、環境関連で成功している国内外の企業はいまだに少ない。チャイナボーチーの成功は、まだ旧式の火力発電所から新式への転換が進んでいない過渡期の中でのビジネスチャンスだったといえる。だが根本的な解決のためには、新式の火力発電所にすべて入れ替わらなければいけないのだ。とりわけ高い環境技術を誇る日本企業には、今後も継続的に中国の環境対策への取り組みを期待したい。
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