退職金は貯金

夕刊フジ 4月17日付
2006年04月17日
 貯金は800万円、退職金はすべて貯金する
 「金利が上がるから退職金はすべて貯金するよ」
 すでに定年の準備をしていると、眉間にシワを寄せながら答えたのは田中亮介さん(55歳)。
 「S信用金庫でシニア定期預金に預ければ金利が1%優遇される(100万円まで)。100万円以上になると優遇率は0.2%になるから、信用金庫と他の銀行と5行にも分けて貯金する」
 感心するほど細かく各銀行のことを調べている。
 そういえばこのところ退職金の使い方が大きく変化していた。数年前まで、退職金は「貯金」にあてていた人が7割以上を占めていたのに、ここ2年ではその割合は6割に減少。貯金よりもマンションを購入したり株式に投資したりする人の割合が増えている。
 それなのに田中さんは貯金にこだわるという。
 「僕はNテレビ局の地方でアナウンサーをしていたのだけど、民間のテレビ局に転職した。理由はもちろん給料が高いから。だけど仕事内容はというと裏方ばかりになってしまった。転職して3年目の42歳の厄年から完全に運が落ちたよ。今までクビがつながっただけでもありがたいと思うよ」
 苦笑いしている田中さんは、42歳で関連会社に移動させられ、その年からその会社の赤字は深刻化した。
 「それでも本社採用だから給料は1500万円は維持された。仕事がないから残業もなくなったけど毎日小さくなって会社に通ってたよ。4200万円のマンションを購入したばかりだったし今さら転職もできない。ちょうど3年後には、もうその会社は消えることになった。やむなく数人のスタッフのクビを切った」
 なるほど、6年前に出会った頃にくらべると人相も変わっている。
 「今度は俺が会社からクビをいつ切られてもおかしくないんだ。」というネガティブな言い回しも、以前にくらべると随分落ちぶれた気がする。
 今のうちからいつ会社を辞めさせられてもいいように貯金だけはしっかりしているのだと自慢気にいうが、その姿がよけい物悲しくみえた。
 田中さんの小遣い
 貯金と節約だけが趣味の田中さん。
 貯金は800万円あるそうだ。
 「それだけじゃ老後の生活に足りないよ。中途採用だし会社つぶしてた男だとレッテルはられているし、退職金は他の人ほどはもらえないだろう。1500万円もらえたらいいほうだ」
 神経質な性格が、将来の心配をよりいっそう強めている。
 『どうせそんなに長生きしないのだろうから、年金は55歳から早くもらいなさい』と、奥さんにいわれたそうだ。
 「いつクビになるか妻も心配しているのだろうなあ。残っているマンションのローンの返済も心配なのだろうなあ」
 「この際、高年齢雇用継続給付をもらいながらできる仕事探そうと思っている。今のうちから探しておかなければ」
 高年齢雇用継続給付は、60歳時点の給料より、その以降(65歳まで)の給料が75%未満に減った場合に支給される。

 何の仕事でもいいから、ちゃんとこういった給付をもらえるように、それにあわせた仕事をみつけるのだという。
 高年齢雇用継続給付は給料が高い人はもらえない。給料の上限に制限がある。仮に60歳時点の賃金が月額30万円で、60歳以後の賃金が18万円に減少(60%に低下)した場合、18万円の15%の約2万7000円しかもらえない。
 田中さんは給料がいいからと転職し、年収はよくなったかわりに不幸になった。定年後もそんなことにならないように目先のお金にこだわらないことだ。
 

4万5000円 田中さんの小遣い帳

     
  月額 45,000
収支 飲み代 22,500
   
ランチ代 21,500
その他 1,000
  小計 45,000
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