日中関係協力 官民レベルで少しずつ進歩。 省エネ製品 所得向上が先か価格低下先か。

月刊 地球環境 2009年2月号 「柏木理佳の中国環境レポート」 4回目(最終回)
2009年01月01日
購買力平価で見ると世界第2位の経済大国となった中国。資源・エネルギーの消費量も米国に迫る勢いで、それだけでに環境問題が深刻化しているが、経済成長に環境対策が追いつかない状況が続いている。中国政府の悩みは深いが、広すぎる国土と13億人の人口、複雑な地方自治制度、所得格差問題など、政治、経済、社会のあらゆる側面で大きな課題を抱えている。
北京市の街を歩くと、百貨店では省エネインバーターエアコンが店頭を飾っていた。しかし北京大学周辺の小さな家電店に入ると省エネ機能のない、値段の安いエアコンしかない。店主に尋ねると「学生や所得の低い層は省エネ型を買わない。高すぎるから」と話した。まだ省エネインバーター塔携型の普及率は1%しかないという中国。所得水準が中の上クラスのホワイトカラーの知人の家に訪問しても、やはりなかった。
日本貿易振興機構(ジェトロ)北京事務所センター次長の真家陽一氏は「中国市場では日本企業の製品は質は高いが値段も高く手が届かないという声をよく聞く」と説明する。省エネ製品の普及へ向け、中国国民の所得水準が上がるのを待つのか、それとも、省エネ製品の価格が下がるのを待つかー。いずれにしても民間レベルで協力関係を構築するには、産業別で良好な関係をつくることが必要だ。
たとえば、二酸化炭素排出量がほかの産業より多い鉄鋼産業では、2007年9月28日、中国・北京において第2回目の「日中鉄鋼業環境保全省エネ先進技術交流会」が開かれた。日本鉄鋼連盟(会長:馬田一・JFEステール社長=当時)と、中国鋼鉄工業協会との共催である。日本企業は既存の技術を提供することで普及につながり、現地の中国企業が旧式の設備からの改善、環境装置への販売につながる。さらに普及されれば鉄鋼産業以外でも日本の環境技術製品のブランド力アップになりそれ以外の販売につながる可能性もある。

東京財団政策研究部の研究員の関山健氏は「環境協力として資金だけを中国に提供する時代は終わった。巨大な経済大国となった中国を、先進国として受け入れるためにも、民間企業間での利益をベースにした取り組みが必要である」という。「北京五輪後の日中関係-8つの提言」(東京財団「ポスト円借款時代の日中関係」研究会)で主査を勤めた同氏は、中国に「公害防止事業団」設立を提案している。

関山氏は続ける。「中国が公害防止事業団」類似の公害防止資金供給制度の設立を望むなら、日本としては人材育成、融資ノウハウ、法制度整備などの分野を中心に官民挙げて協力したい。『公害防止事業団』で団塊の世代の経験者が定年後、中国での『公害防止事業団』立ち上げのためスタッフとして活躍してくれるのではないか」という。
進む日中官民挙げた環境協力。
中国の環境問題の改善は、もちろん、民間レベルの対応だけでは進まず、日中両国政府の関与も必要だ。2006年「第1回日中省エネルギー・環境総合フォーラム」(主催=経済産業省、財団法人日中経済協会、中国国家発展和改革委員会、中国商務部、在日本国中国大使館、日本側550名、中国側300名、計850名参加)が開催された。これは、2006年12月、経済産業省、日本経済界の協力を得て、民間企業の対中省エネ・環境ビジネスの推進母体として「日中省エネルギー・環境ビジネス推進協議会」が設立された経由がある。
会長は財団法人日中経済協会の会長でもある張富士夫氏であり、第2回目は2007年11月に北京で開催された。この第2回フォーラムにおける調印式に出席したカワサキプラントシステムズ株式会社の営業本部・理事、高山健次氏は「本フォーラムに参加したことで、中国のCONCHグループと設立した合弁会社のことを両国の政府や首脳にアピールし、深く認識してもらうことができた」という。

10あるプロジェクトのうち、カワサキプラントシステムズは合弁企業を設立し、排熱発電について参加している。そのほか松下電工や日立製作所などが参画した。第3回目は今年11月、東京で開催、省エネルギー・環境に関する協力事業は19件に上った。

その一部は以下の通りだ。水処理膜製品群を中国国内で生産・販売・輸出入を行う合弁会社設立(東レ)、日本最先端オゾン技術による中国の湖沼等水質改善合弁事情(日揮、丸紅)、大連市での工業ボイラの省エネ推進事業、大連市ボイラ圧力容器検験研究所と工業用ボイラの遠隔管理装置を共同開発、普及促進(三浦工業)、北京泰豪智能科技有限公司とビル電気トータル省エネルギーシステム(パナソニック電工、三井物産)。
最も需要なのは、中国政府、自治体自身の努力。
このように官民の日中環境協力も重要だが、最も大事なことは、中国自身の取り組みーすなわち、中国の自治体、政府による環境規制や優遇措置などによる政策誘導である。
たとえば北京市の場合、大企業に加え中小企業についても省エネ・環境保護関連の再担保業務を展開し貸付金利の補助などに本格的に乗り出す。北京市内の中小企業の数は30万社。市内の企業総数の99%を占め、その売上高は市内の企業全体の60%を超えるが、資金繰りの難しさが環境対策やビジネス拡大を制約しているからだ。
貸付金利の補助は、市政府が内需拡大と経済発展促進に向けて行う総額1200億~1500億元の投資の中から、その一部を中小企業と再担保機関向けに配分するもので、北京市中小企業信用再担保有限責任公司が設立された。
中国政府も環境予算を増額している。2008年3月全人代(全国人民代表大会)では財政部は省エネ排出削減推進のため2008年度予算に6,300億円を計上した。日本政府全体の環境保全経費が約2.2兆円と比較すればまだ少ないが、4月1日には「改正省エネルギー法」が施行され、地方政府に省エネ目標と現状を国務院に報告する「省エネ目標責任制」が義務付けられた。
達成状況により地方政府を評価されるため、各省庁関係者も自分の出世をかけて真剣に取り組まざるを得なくなっている。
日中両国政府 環境協力の返還。
四大公害病などを体験した日本は環境問題に早くから取り組んできた。対中環境協力として日本は大きな役割を果たし存在感をアピールするはずだった。すでに1988年に日中友好環境保全センター、1994年に日中環境保護協力協定などが結ばれている。
1988年、竹下元総理大臣が李鵬総理にもちかけた「日中友好環境保全センター」は、環境分野の科学技術及び政策戦略の調査研究、計測及びデータ処理の手法開発など環境保護部直属の総合研究・管理執行機関として設立された。1992年からJICA技術協力プロジェクト、2008年はプロジェクト・フェーズⅢフォローアップを実施している。
また1994年に締結した「日中環境保護協力協定」では、大気汚染、酸性雨防止、水質汚濁防止、有害廃棄物処理などの意見交換が1994年から2007年まで7回開催された。また、近年でも2007年温家宝総理の訪日時に「日中環境保護協力共同声明」を掲げ、水質汚濁、循環経済、酸性雨防止などの協力が求められた。2008年5月の胡錦濤国家主席訪日時にも「気候変動に関する共同声明」が発出されている。
一方で円借款としては代表的なものに1997年9月に橋本龍太郎総理と李鵬総理との間で合意された「日中環境モデル都市構想」がある。1998年4月には、重慶、大連、貴陽の三都市をモデル都市と定め、2000年160億円、2001年147億円の円借款が実施した。2000年9.4億円、2001年10.51億円には無償資金協力よって「環境情報ネットワーク構想」として中国の主要100都市の環境情報ネットワークを構築した。
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