経済教育学会誌28号 女性特有の職業においての人的資源とリカレント教育 日中の航空会社の比較

2009年10月28日
女性特有の職業においての人的資源と
リカレント教育
日中の比較 航空会社の例
 
1 はじめに
日本ではフリーターやニートなど若者の働き方が問題になっている中、大学ではキャリア教育に力をいれているところが増えた。ところがすでに職業を持っている社会人、転職をしたいと考える人に対して役に立つリカレント教育は重要視されていない。日本の雇用問題の課題ともいえる大学卒業者の教育レベルと労働市場での要求レベルとのミスマッチを解消することが問題視されていない。産業別においても意識されておらず、また企業や個人においてもキャリアアップを対象にしたリカレント教育を意識しているところは少ない。日本において学歴インフレが続いていると世界から指摘されている中[1]、その学歴にふさわしい仕事に就いていない割合は女性のほうが多く、近年の雇用の格差にともない雇用環境の悪化がみられる。格差が問題になっている中、雇用環境においての格差問題の悪影響は多くが女性にしわ寄せが来ているのが現状である。
一方で中国では結婚、出産しても、ほとんどの女性が企業を退社しない。育児休暇をとっても日本企業と違い昇進などに大きな影響もない。しかし中国企業と日本企業を比較してみると中国企業が必ずしも日本より恵まれているとはいえない。また法律で定められていることや政策においても決して十分とはいえない。
本論文では日本企業と中国企業のフライトアテンダントを中心に、現職者のアンケートとヒアリングをもとに現状を分析し日本と中国の女性においての個人の職業意識の相違点と企業側の雇用意識について分析する。女性特有の職業は現在の日本企業の女性の雇用問題を浮き彫りにしている。フライトアテンダントの個人の再就職への意識がない、リカレント教育の欠如にともなう個人の職業意識と、航空会社の雇用の流動化対策を分析し個人と企業においてのリカレント教育の促進と流動化対策に対して若干の示唆を設ける。
 
2 日本と中国の雇用形態の特徴
2-1 日本における女性の雇用形態
日本において労働力人口が減少している中で、女性の人的資源の活用が注目されている。育児、出産を理由に退社した女性を再雇用する制度を掲げている企業、新入社員の半分以上に女性を採用する企業、女性の昇進を促進している企業も増えている。
しかし実際に調査してみると、女性の人材に注目し活用している企業はマスコミに注目され取り上げられている一部だけにとどまっており、大多数の女性は昇進ができないどころか再就職することさえ困難であるのが現状である。たとえ再就職先で雇用されたとしてもその平均的な雇用形態や条件は男性よりも格差が拡大している。格差雇用が問題になっている中で、女性においてはその差はさらに拡大している。
近年においては再び正社員の数が増加し2006 年の労働力調査では前年比で約37 万人増の3411 万人になり10 年ぶりに増加に転じている。それなのに非正社員の数は、景気が低迷した1997 年前から増加し現在では全体の3 分の1、女性に限っては5 割を占めている。少子化にともない日本経済をになう労働者不足に加えて若年者の就業能力の低下にともないニート、フリーターの増加が社会問題になっているのに加え、団塊の世代が大量に定年退職をむかえ、労働人口の減少により深刻な労働社会問題をかかえている中で、注目されているとはいえ実際には女性の雇用問題に対しては大きな改善策がみられているとはいえないのが現状である。
日本の女性の年齢階級別にみた労働力率は女性が出産を機に会社を退社し子育てに時間を必要としなくなったときに職場に復帰するM字型カーブを描いている。総務省「労働力調査」(平成18年版)による女性の労働力率を年齢階級別にみると、25~29歳の労働力率は75.7%を占め年齢階級別で最も高い労働力率となっている。M字の底は平成7年では30~34歳で53.7%だったが、平成18年をみると30~34歳が62.8%、35~39歳が63.6%で、2つの年齢階級が底となっている[2]。このM字カーブの変化は,女性の晩婚・晩産化による子育て年齢上昇を反映したものと考えられる。この就労スタイルは高学歴化、晩婚化、出産の高齢化、少子化、子育て期に就業を中断し、その後復帰する日本と韓国の女性に顕著にでている。特に女性の雇用においてパートタイム、アルバイト、派遣社員など非正規労働者比率が上昇している。非正規労働者が多い背景には、日本企業の業績悪化などもあるが、女性の場合は、出産と同時に退社し、その後、子供の成長とともに段階的に社会に復帰するという、時間の使い方にもある。韓国や日本の文化の中には夫が主たる収入を得る役割、妻は主に家庭を守るべきという性別役割分業体制が根強く残っているため家事や育児の負担を改善できずに仕事は時間を考慮できる補助的なパートなど非正社員にとどまる傾向にある。このことは男尊女卑や家長制度の基となる儒教文化的な風潮が日本や韓国において残っていることと無関係とはいえない。採用する企業側においても、労働者を募集・求人する際の求人年齢制限緩和の努力義務が定められているにもかかわらず、未だ年齢制限を設ける企業もある。また仮に設定しなくても意図的に年齢によって採用しないケースが多々ある。
 
2-2 中国における女性の雇用形態と企業の雇用方法
中国における女性就業者の年齢階層別構成(農林牧水産業を除く)の推移をみると、1982 年には29 歳以下の構成比が大きく30 歳以上になると急速に低下する傾向を示していたが、1990年には15~19 歳層が大幅に低下し、30 歳以上層、とくに35~39 歳層が大きく上昇している。ところが2000 年になると、29 歳以下の層が低下しているが、30 歳以上層が上昇している。全体としてはEU諸国型のカーブに近くなってきている。1980 年代以降改革開放以来、著しい経済発展とともに製造業を中心に女性の就労も増加したが、1988年以降は製造業の就労率は横ばいとなり近年では特に卸小売飲食業と建築業の増加が著しい。中国の特徴としては民営化が進む中で国有企業のリストラが実施され、これまでの終身雇用制度が崩れて特に学歴が十分でない製造業や卸小売飲食業においての女性の失業者が増加している。近年の中国において女性の雇用形態の傾向としては日本と同様にリストラなどの悪影響を男性よりも余儀なくされているのが現状である。
 
 
3 企業の採用方法と雇用側の意識の差
2007 年4 月に実施した内閣府の調査によると、「子育てをして再就職をした場合、年収は以前の半分以下になった」と答えた女性は全体の44%をも占めている。しかも再就職先がパートやアルバイトにおいての雇用形態は69%を占めており、正社員として復帰できた人は10%しかいない。正社員と比較すると賃金も大幅に少なく、この格差は男性よりも拡大している。退社理由を女性にヒアリングしたところ4「上司の女性の目がきつく、子育てをしながら続けられなかった」という意見もあり、これまで結婚か仕事か選ばなければ続けられなかった40歳代以上で両立している見本となる女性上司が会社に少ないことも問題である。再就職支援制度を導入している企業の人事課にヒアリングしたところ、40歳代の専業主婦として長年のブランクがある女性を正社員として復帰させた理由に、「若年層の女性が結婚・出産しても続けられる雰囲気を作るためのアドバイザー的な役割を果たしてほしい」とコメントしている。パソコン入力や暗記力など新入社員の女性に比較して劣るが40歳代の仕事と家庭を両立した経験のある女性を雇用することで、若年層の女性たちの雇用維持に対して好影響があることを期待している。これまで多くの女性たちが両立するに当たり女性のキャリア維持のための前例が少なく、なんとなく退社せざるを得ない雰囲気になったことも認めざるを得ない。また、残業が多い日本の企業文化も働き続けにくい理由である。育児休暇制度ができても企業の雰囲気が改善しておらず大きな効果はでているとはいえないのが現状である。

特に女性の職業において「若さ」「容姿」「体力」などを求められる場合、間接的にそれらの衰えを理由に退社を迫られるケースもある。中国企業においても同様のケースがみられ、中国政法大学法学院の蔡定剣教授は、「中国の差別防止および雇用機会の平等に関しては、法律で定められた基本原則があるが雇用差別を防止する制度は少なく『雇用差別禁止法』『雇用機会平等法』などのさらなる改定が求められる」としている。
 
4 女子大学生の職業意識の比較
2006年度の大学や大学院へ進んだ女子学生数の占める割合は過去最高となったが、一方で短大の学生数は1966年以来の20 万人を下回った。女子の専攻分野は、8年前までは人文科学が多かったのが近年は社会科学が一番多く全体の3割以上を占めている。工学を専攻する割合も1割を超え、理学,保健の分野においても増加。社会人学生においても約4割が女性が占めるほどになった。男女の学歴の差は縮小しているのにもかかわらず、まだ現在においてはそれが職業にはいかされていないのが現実である。「学歴の高い日本人の女性がそれをいかして働いていない」「女性の過少雇用は貴重な人的資源の浪費、緊急対策が必要」ということが経済協力開発機構(OECD)の2008年版の「雇用アウトルック」で指摘された。日本の女性の約43%が大学など高等教育を受けていてOECD加盟30ヶ国の平均約29%を大きく上回っているのにもかかわらず、女性の雇用はOECD加盟30カ国では下から7番目の低さである。
日本で就職活動を始める大学3年生と短期大学2年生にアンケートを実施すると、「結婚したらいったん仕事を辞めたい」「その後は家庭を中心に余裕のある時間だけ仕事をしたい」という女子は短期大学生の8割を占めた。大学生においては「生涯働ける会社に就職したい」「リストラや転職は大変だから定年まで同じ会社で働きたい」という回答が99%を占め、女性の職業意識において計画性が高いというよりは、退社については景気の低迷による先行き不透明な日本経済に対する不安な影響を多く受けていることがわかる。
まず日本よりも就職難であることが背景にある。中国国家発展・改革委員会の発表によれば、中国の大学生による2006年求職者数は2,500万人であるのに対して求人総数は1,100万人でしかない。有効求人倍率(求職者÷求人数)は0.44倍であり、日本の1.89倍より困難な状況に陥っている。そんな中で特に女子学生への企業の対応は日本よりも厳しく就職率も悪化している。中国教育部の1995年と1996年の調査では、大学生が就職先を選ぶ基準としては1位が収入だったが、2001年末には1位が将来性、2位が自分の才能を生かしてくれるかどうか、3位が収入の順と変化しており、経済成長による生活が豊かになる中、強い上昇志向を持つ学生が増えたといえる。2006年と2007年おいては「仕事と生活のバランス」が1位となっていて上昇志向からゆとりを求めるライフスタイルを求めるよう変化している[1]
 
5 女性の雇用における法律
日本では、男性共生時代の賃金三原則において、①男性世帯主賃金の構成から男女の個人単位賃金に変更すること、②「年功序列型」の基準賃金から「仕事内容」に基づく基準賃金への変更すること、③生活できる賃金水準にすることとある8。中国企業は「女性三期(妊娠期・出産期・授乳期)」に解雇を禁止と明確にしている。工場、事業所内、または近くに託児所を設置、授乳婦はそこで一日20分X2回ほどの授乳時間をとることが可能なシステムになっている。1歳までの授乳期は「使用者は1日1時間の授乳時間を付与しなければならない」と掲げられているため託児所の設置においては厳しく守っている企業が多い。中国の妊娠期は、「妊娠7ヶ月以上の場合、使用者は労働者に毎日一定の休憩時間を付与しなければならない」とされ7ヶ月までは病気とみなすわけではないから通常通り働くことが当たり前と考えられている。また出産期(産休期間)の基本は産前15日産後75日とされているため、多くの女性がすぐに職場に戻る。産休期間においては満24歳以上の初産の場合や難産と診断された場合でさえもプラスして15〜30日ずつ付与されるにとどまっている。三期内においては女子労働者の基本賃金を下げることは、原則できず、さらに妊娠を理由に「労働法」「女性従業員労働保護規定」「女性権益保護法」に記載され、また厳しく地方ごとに地方条例があるため守られている。1995年北京で開催された「国連第4回世界女性会議」では、中国では初めて世界に向けて、ジェンダー間の平等を基本的国家政策とする意思を表明したことになった。それから10年後、中華全国婦女連合会による「Reference Book on Women of China」(2005年)によると、2000年から婚姻法、人口と家族計画に関する法、女性の健康や教育、雇用、婚姻、家族等女性の暮らしにかかわる法律や規制を改正し、2005年には、女性と女性の法的権利の保護に焦点をあてた女性権益保障法(1992年制定)を改正した。これによって2007年世界経済フォーラムが公表しているジェンダー・ギャップ指数は73位で、女性国会議員比率20.3%と、日本よりも上位に位置している。
 
6 日本のキャリア教育、リカレントの教育の現状と問題点 
厚生労働省「平成18年度能力開発基本調査」によって、正社員の職業生活設計についてでは、「自分で職業生活設計を考えていきたい」とする者(「どちらかといえば、自分で職業生活設計を考えていきたい」を含む)は67.9%(非正社員では46.3%)で高くなっている。自己啓発の実施状況をみると46.2%の実施率(非正社員23.4%)である。自己啓発の目的は、同「平成17年度能力開発基本調査」では「現在の仕事に必要な知識・能力を身につけるため」79.3%、「将来の仕事やキャリアアップに備えて」53.4%、「資格取得のため」29.0%としているが、正社員の実施形態は、「社内の自主的な勉強会・研究会への参加」42.8%、「ラジオ・テレビ・専門書・インターネットなどによる自学・自習」39.0%「民間教育訓練機関(民間企業、公益法人、各種団体)の講習会・セミナーへの参加」28.6%、「通信教育の受講」21.3%となっている(同「平成18年度能力開発基本調査」)。つまり実際に転職に役に立つものは少ないことがうかがえる。また現在の職業となりたい職業において不足している能力を磨いたりするなど職業分析と自己分析が十分でない中での適切とはいいきれない自己啓発が行われている。
その理由は「仕事が忙しくて自己啓発の余裕がない」60.5%、「費用がかかりすぎる」40.3%、「セミナー等の情報が得にくい」23.9%、「自己啓発の結果が社内で評価されない」22.6%、「適当な教育訓練機関が見つからない」21.5%、「コース受講や資格取得の効果が定かでない」21.4%、「休暇取得・早退等が会社の都合でできない」20.2%という回答を正社員はしているが、その割合は非正社員よりも多くなっている。今後ますます非正社員が増加すれば、リカレント教育はさらに悪化することが予測できる。
 
7 女性特有の職業においての企業と個人の職業意識
7-1 フライトアテンダントのリカレント教育意識の比較
日本人フライトアテンダントの日本の航空会社のOBの45歳から60歳の15人に実施したアンケートにおいては、結婚や出産したことを理由に退社した女性は9割を占めている。その割合は事務系の職業よりかなり高いことがわかる。事務職においては、結婚して退社するよりも妊娠したことを理由に退社する人が多いが、フライトアテンダントのOBにおいては、出産ではなく結婚を機に退社する人が多いのが特徴である。体力的に限界があること、短期的または長期的に出張があり夜に家をあけることも負担であることも理由に掲げている。結婚しても続ける人は1割しかいなかった。なお、そのうち2人は子育てを終えて再雇用として再び契約社員でフライトアテンダントに復帰している。しかしOBの30歳から44歳において15人の退社理由には「体力的限界」「他の仕事に挑戦したいから」という理由が5割であり、実際に結婚や出産を理由に退社している人は5割以下でしかない。しかし入社時に想定していた職業意識と現在の職業意識、そして退社するときの職業意識には大きな差がみられた。現役のフライトアテンダント、22歳から35歳に実施したアンケートでは、入社時に「退社するときの希望的な理由」には、いわゆる「寿退社」が50%以上を占めていて、35歳から45歳の現役フライトアテンダントの75%を下回った。若い層においてフライトアテンダントになった理由は結婚のためと考えている女性も多い最近では、日本の航空会社において契約社員として採用する企業が多いため、また社会全体において平均結婚年齢が遅れているため、勤続年数はやや長くなっている傾向にあるが、その平均勤続年数はOBのアンケートでは4 年間であった。
中国人と日本人のフライトアテンダントでは職業意識に大きく差がある。1970 年代に専業主婦が多かった日本においてフライトアテンダントは社会的ステイタスも高く結婚相手を見つけるための手段でもあった。そのイメージが浸透し現在でも転職を前提としたリカレント教育意識が薄く、その上、雇用の流動化が高い特徴がある。近年の航空会社の業績悪化と雇用契約により平均勤続年数が伸びている会社もあるが、日本において、未だ転職率が高い職業といえる。フライトアテンダントが希望通りの転職ができる人は数パーセントしかおらず、転職先がみつからないまま退社する人が多い。中国においてはサービス業が発展していないこともあるが、近年の海外旅行ブームによりようやく航空会社が女性のフライトアテンダント採用に力をいれるようになった。そのためフライトアテンダントの意識は奉仕、サービスといったものよりも保安要員という意識が強い。また経済成長の中、リカレント教育、キャリアアップへの意識についてのアンケート結果によると「平均勤続年数は短いことを知った上で将来に不安を持っている」人は8割以上占めているものの、「転職のため何らかの準備を進めている」人は1割もいなかった。特にフライトアテンダントはパソコン入力、経理、事務処理などの必要性がない。経験・能力の不足は次の職業に転職するのに不利になることを承知していながらも「時間の不規則」、「フライト先の不規則」などの不便であることを理由に9割が「自主的に訓練を受けていない」「受けることが難しい」というのが現状であった。意識・理解はあるものの実践に移せないところが将来への不安と焦りにつながっている。個人においてもリカレント教育への関心が著しく希薄で充実していないことが分析できる。
中国人フライトアテンダントにおいてもリカレント教育として次の転職先を具体的にイメージしそのために何かを習得している人は1割以下であった。日本語や英語などの語学においてビジネス用語を勉強し通訳家を目指す人はいたが、時間に拘束があり教室に通うよりも個人的なレッスンを受けることが多く、定期的な勉強を習慣づけるには困難であることがうかがえた。
 
7-2  応募時と退社時の個人の意識の比較
入社の際の職業意識を比較すると、中国人フライトアテンダントは応募の際に、「体力が続く限り一生働きたい」「次に給料とステイタスが高い職業が見つかるまでは働き続ける」という回答が7割を占めている。中国以外でもフィリピン、シンガポールなどアジアではフライトアテンダントの職業は日本よりもステイタスと給料が高いため「出産しても育児休暇をとり復帰したい。できる限り働きたい」という回答が多かった[2]。確かに一般職よりも多少の外見が重要視されるものの、応募したときの意識をアンケート分析をしたところ①高卒という学歴条件においてステイタスの高さや給料の高さがある ②旅行ブームによる旅行体験ができる が大半を占めていた。それでも出産を機会に退社する予定はなく、ましてや体力の限界をあげている人もいなかった。さらなるステイタスや給料の高さを探し求め希望通りの内容が見つかればあっさりと転職したいという傾向が目立った。日本人は「結婚・出産まで働きたい」「3年くらいをめどにやめたい」「海外旅行が十分にできたら退社したい」という短期的な計画しかなく、採用者の多くは有名な4年大学卒業者が多く学歴インフレがおきている。社会的地位は未だ日本において高いほうかもしれないが、短命で終わる職業という意識は日本社会においてブランド戦略化が成功しているだけにその傾向は中国より強い。
採用する企業側においては、日本の航空会社はフライトアテンダントは未だブランド戦略の商品の戦略として扱っているところが多い。ファッション雑誌に登場させ持ち物を披露させるだけでなく自社製品の開発やイメージ戦略においてもかかわらせている航空会社が多い。そのブランド戦略は成功しているといえ、フライトアテンダントの専門学校まで存在しているのは日本だけである。
男女雇用機会均等法により1999 年の改正により募集・採用、配置・昇進、教育訓練、福利厚生、定年・退職・解雇において男女差をつけることが禁止され、スチュワーデスの呼び方がフライトアテンダントになり機能性も重視し始めたが、その効果は表面的なものにとどまっている。雇用の流動化とともに男性の派遣社員も増加しているものの、圧倒的に女性のほうが多く、若さと美貌を重要視されている女性特有の職業といわれている。これは未だ根強い多くの日本企業の一般事務職としての採用においても生涯働くことを見込まずに女性を採用していることと同じことがいえる。フライトアテンダントは1970 年前半までは定年退職は30 歳と設定されていた。1980 年代からは、最も年齢の高いフライトアテンダントが何歳まで働き続けるかによって段階的に定年が延長され、現在では60 歳が定年と定められているが実際には表向きの定年とは違い定年まで働き続ける人は、各社に1~2 人しかいない。他の職業に比較すると平均勤続年数は短い。日本の航空会社の場合、派遣社員制度が設定されてからは正社員になるまでに5~6 年がかかるため、平均勤続年数はそれ以前より2 年ほど延びているが、それでも4 ~5年が平均的であり自ら退社する例も多い。それは理想である寿退社もあるが現実にはその多くは①体力的な限界②一生続けられる仕事ではない③将来への不安④イレギュラーな勤務体制⑤入社前に思い描いていた華やかなイメージとは違う、などである。
フライトアテンダントから地上職や総務部などに異動するケースは日本の航空会社では稀であるのに対して、中国をはじめ外資系の航空会社では多く存在する。社内での異動が難しい上、キャリア形成が難しい女性特有の職業なのがフライトアテンダントという職種である。
中国においての退社理由は①給料の高い企業を見つけた②ステイタスが高い企業を見つけた③昇進できる企業を見つけた、であり、仕事が見つからないまま体力的限界により退社する人はいなかった。
 
7-3 航空会社の採用意識の比較
2008年9月には北京五輪の各競技に華を添えた美女コンパニオンたちの再就職先として、中国南方航空が100人を客室乗務員として採用した。年齢は18〜25歳、身長は168〜178cm、体型や骨格も厳しく審査され、肌の状態や教養レベルまでもが厳格に規定されているコンパニオンを採用することは、保安要員としての安全性よりも外見を重要視しているといえる。しかし男性のフライトアテンダントの採用もあり、また専門学校もなくフライトアテンダント愛用商品などと販売戦略として利用されておらず日本ほどブランド化されていないといえる。
日本の航空会社の場合、2009年新卒客室乗務員では契約社員と契約社員とわけて明記している。契約社員の導入は1994年8月、日本航空を初めとする航空会社3社が、人員削減を柱とする4ヶ年の新経営再建計画をまとめ契約制客室乗務員を採用、「契約で採用した後、3年後に考慮の上、正社員とする」とした。それでも募集した契約制客室乗務員100人の採用枠に対して、応募者は約2,500人にも達した。このときから10年以上、フライトアテンダントが新たな雇用契約により契約社員としての業務を続けていることになる。その後、日本ではそのほかの職種においても派遣社員や契約社員が急増し企業による人件費のコスト削減に注視されている。そして労使による訴訟問題も増え、労働組合との力関係が企業にとってのネックとなっているともいえる。契約社員を増加しコスト削減を図っているが、一方で必ずしも雇用の流動化に結びついているとはいいきれない。人件費削減のために導入した契約社員だが、業績は改善せずに2006年度を再生初年度と位置付け、10 月には、連結子会社である株式会社日本航空インターナショナルと株式会社日本航空ジャパンとを合併させ「日本航空グループ」として新たなスタートを切った。燃料価格が高騰する中で、その前の先物買いが効果を上げたことで、燃料の調達コストが当初見通しより燃料費のかけるコストを節約できたこと、1991年同時多発テロやイラク戦争、SARSなどの発生が落ち着き国際線が回復したという外的要因と不採算路線の整理・縮小を含む路線網の見直しや供給・輸送能力の縮小、国内線旅客市場での良好な需給バランスの調整により採算性をあげている。人件費を1割程度カットしたことで2008年においては人件費は500億円の連結人件費削減施策を達成し、厚生年金基金の代行返上効果で大幅に削減された前年度とほぼ同額に抑えることができた。人件費削減の内容は、早期退職制度の導入、退職金を2012年度まで段階的に切り下げ、最終年度で9.3%切り下げる就業規則を改訂、最終年度では約350万円の退職金のカット、リストラの加速などによる効果があったとしている。そのうちフライトアテンダントを含む早期退職制度は勤続年数が15年以上の社員で対象年齢は管理職が満54歳以上、一般職は満50歳以上とした。2006年から2年間の限定措置として基本給を一律10%削減したが、燃料価格が高騰などにより、さらに人件費削減に乗り出したことになる。しかしリストラや早期退職制度などの効果はでているものの組合が強い航空会社において契約社員による若くてきれいなときにだけ働いて退社する雇用の流動化が促進されているのかどうかは疑問である。大量にフライトアテンダントを募集する年があるかと思うと数年間も採用しないなど採用人数と時期にはかなりの波があり計画性が高いとはいいがたい。アンケートによると「契約社員だから、正社員との差別が大きい。一回は正社員になってからいい待遇を味わってからやめたい」という回答も多く、正社員になるまでは頑張るというモチベーション作りに拍車をかけているともいえる。新卒の場合、どこの航空会社も2ヶ月間から3ヶ月間の研修を実施する。その内容は機内で使う語学力の研修、機内でつくるアルコール、カクテルドリンクの作り方、メイクの方法、サービス、マナーの向上など、保安業務である。特に保安業務においては1年おきに数日間の訓練の復習とテストがあり、そのテストに合格しないと次年度のフライト業務を続けることができる。これらにかかる研修費用だけでなくこの期間はホテルや寮に滞在することになりその経費もかかる。それでも既卒者よりも新卒採用を中心に募集している日本の航空会社には期待する人的資源の活用方法が若さや美しさなどを

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