災害に備える保険活用術 地震保険の基礎知識 ファンケル百楽

2011年07月01日

ファンケル健康院出版 百楽7月号

生活経済ジャーナリスト
柏木理佳の熟年世代の「マネー」講座

連載第16回

災害に備える保険活用術――
地震保険の基礎知識
<リード>
東日本大地震を契機に、注目を浴びている地震保険。でも地震大国の日本だというのに、地震保険の加入率はたった2割程度なのです。この背景には、地震保険の認知度の低さや、補償額に比べて割高な保険料があります。でも災害はいつ襲ってくるかわかりません。たとえ数十年の確率だとしても、その備えをしておく必要があるのでは……? そこで今回は地震保険についてまとめてみました。

 

【本文】
地震保険と火災保険、
どこがどう違うの?

 地震保険は単独で契約することができず、必ず火災保険とセットで契約しなければなりません。火災保険だけでは地震や噴火、地震や火山の噴火、津波による被害などでは保険金を受け取ることはできませんし、地震の影響で起きた火災も補償されません。火災保険はあくまで、マンションや家などの「住宅や家財の損害」が補償対象だからです。つまり地震などの災害から家財を守るには、地震保険に加入しなければなりません。

全国を危険度で4つに区分

現在、地震保険の世帯加入率は全国平均で約23%、火災保険加入者が付帯する率も46・5%と驚くほど低いのが現状です。
加入率が高い県は、1位高知県70%以上、2位愛知県、3位宮城県がいずれも60%以上です。もっとも低いのが長崎県で30%以下。今回の被災地では、宮城県が67%と高いのですが、福島は39%、岩手は42%で、全国平均を下回っています。

地震保険は、全国各県を地震リスク度別に、危険度が低い1等から順に4等まで4つに分類しています。危険度が高い4等地に指定されているのは千葉、静岡、愛知、三重など地震の多い県。低い1等地の県は福島、栃木、鹿児島、熊本県などです。

地震のリスク度が高い県は保険料の掛け金が高くなる設定になっていて、保険料率はこれをもとに全国を8段階に分類しています。たとえば1等地に指定されている鹿児島では保険金額1000万円に対して年間で鉄筋コンクリート構造物が5000円、木造住宅が1万円の保険料ですみますが、4等地でも住宅過密問題もあって“もっとも危険度が高い”ランクの東京都や神奈川では、それぞれ1万6900円、3万1300円を払わなければなりません。

地震に対する危険度が高い木造住宅のほうが保険料も高くなるというわけです。ただし免震構造の建物なら30%、免震構造でなくとも、81年6月1日以降の建築物なら10%割引など、いくつかの割引制度があります。
ただし、東日本大震災によって、「リスク度」が引き上げられ、料金も上がる地域が出る可能性もあるので、加入するなら早めのほうがお得かもしれません。

補償額は火災保険契約金額の5割以下

地震保険の補償額は、同時加入の火災保険契約金額の30~50%以内と設定されています。建物は5000万円、家財は1000万円が上限です。たとえば2000万円の火災保険に加入しているとすれば、建物の地震保険は600万円~1000万円という計算になります。

 地震の損害額は予測不可能で、巨額な損害額が想定されるため、地震保険の運営は政府と損保各社が共同で行なうことになっています。そこで「地震保険に関する法律」の規定に基づき補償内容が制限されているのです。
自分が地震保険に加入しているかどうかがはっきりしない場合は、保険会社に確認を。火災保険契約期間の途中からでも地震保険契約はできるので、いまからでも加入できます。

「全損」「半損」「一部損」
の仕組みを知っておこう

地震保険は、できるだけ早く保険金が受け取れるようにあえて細かな調査を省き、損害の大きさを「全損」「半損」「一部損」の3種類だけに区別し、「全損」は補償金額の100%、「半損」は50%、「一部損」は5%を受け取る仕組みになっています。
つまり、必ずしも損害金額が全額補償されるわけではないということです。「全損」「半損」「一部損」の区別は、図2を見てください。
 また、地震保険は基本的に、住居としている建物の主要部分だけが対象です。ですから、工場や事務所として使っている建物では支払いを受けられません。
 一方、家財に関しては、「生活必需品」が対象です。たとえばテレビや冷蔵庫、洗濯機などは対象ですが、1つの価格が30万円を超えるものは「ぜいたく品」とみなされ、対象から外されます。有価証券、通貨、貴金属、宝石、美術工芸品も対象外です。
 また、自転車や125CC以下のバイクは「生活必需品」ですが、自動車は対象外。今回の東日本大震災のように、流された自動車の補償を考えるなら、自動車保険の車両保険に「地震・噴火・津波危険補償特約」をつけておくといいでしょう。

「少額短期地震保険」の
メリット・デメリット

 これまで、地震保険は火災保険に加入しなければ入れませんでしたが、新しく始まった「少額短期地震保険」なら、火災保険に入らなくても地震保険単独で入れます。「ミニ地震保険」といえばわかりやすいでしょう。これには「日本震災パートナーズ株式会社」の「Respa」があり、「レオパレス少額短期保険会社」などでも取り扱っています。詳しくは「少額短期ほけん相談室(指定紛争解決機関)」、金融庁「金融サービス利用者相談室」などで確認できます。

「少額短期地震保険」は、従来の地震保険のように地域によって掛け金が異なるのでなく、世帯人数に応じて掛け金が変わります。たとえば3人世帯で、東京の新耐震用マンションに住んでいる場合、年間2万円前後の掛け金で一定額が補償されます。ただし従来の地震保険のように「被害額に対する補償」という考え方ではなく「生活再建費用」に力点を置いた補償額なので、数千万円単位ではなく、多くても900万円まで。補償額が少ないのがやや難点です。でも、家屋再建よりも生活費や引越費用を主に考える場合など何にでも使ってもいい点は、大きなメリットがあります。

 つまり、火災保険に未加入だが、すでに地震保険に加入しているが補償額不十分な場合には、少額短期地震保険などのミニ保険で、数百万の生活費用補償を想定しておくのも賢明です。

 ただし「少額短期地震保険」は、資本金1000万円程度の小規模保険会社でも販売できるため、大手の火災保険ほどの信頼感がなく、また「全損」「半損」は適用されますが、「一部損」の補償はありません。大災害で家屋や家財が崩壊した場合、生活再建には役立ちますが、この補償金額だけではいささか心もとないというのが実感です(図3)。

補償範囲が広い火災保険を活用するのも有効

地震保険に入らなくても、火災保険にも、家屋だけでなく家財もカバーするものがあります。

たとえばJA共済の「建物更生共済(むてき)」。これは火災保険に付随して、水災害、地震、噴火、津波、雪災などの自然災害への保障がセットになっています。住居や家財だけでなく、店舗や事務所、営業用什器や備品なども対象にできるので、事業を営む方に最適。しかも火災や地震などの自然災害による怪我や死亡も補償され、死亡1人につき1000万円が上限です。
全労済やCO-OP共済などには、自然災害で「地震等共済金」が支払われる「自然災害保障付火災共済」がありますし、全国の各都道府県共済の「新型火災共済」もおすすめです。自然災害で半壊・半焼以上の被害があれば、「地震等見舞共済金」が受け取れます。
そのほか、「アメリカンホームダイレクト 家財安心プラン」 や「ジェイアイ傷害火災くらし安心総合保障」や、補償内容を自分で選べるセゾンのじぶんでえらべる火災保険」などがおすすめですが、契約内容と損害の状況によって補償内容が違ってくるので、契約の際によくチェックしてください。

 ただ、地震は大きな被害をもたらすので、本来の地震に備えるという意味では、従来の地震保険の加入をおすすめします。
 地震保険は、リスクの頻度の割に保険料が割高なので、加入を躊躇する方も多いと思います。しかし、ひとたび自然災害に見舞われたら、家も財産も失います。被害金額も数千万から、人によっては数億にもおよび、簡単に取り戻すことはできません。やはり最悪のケースを考えて地震保険に入り、補償額も加入最大限にしておくべきです。一方、賃貸住宅にお住まいで地震保険に加入してない場合は、火災保険の家財対象部分を手厚くしておくといいでしょう。

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