社会貢献寄付信託

2011年12月01日
ファンケル健康院発行 百楽 柏木理佳の熟年世代のマネー講座第21回

社会貢献寄付信託

 

未来の社会をよりよくしたい……
考えてみませんか!
社会貢献活動を支える「社会貢献寄付信託」

東日本大震災後、被災地でボランティアや社会貢献をする人たちが増え、また、被災地に積極的に義援金を贈るだけでなく、寄付を考える人たちも増えてきました。でも「寄付といっても、何から始めたらいいのかわからない」という場合や、「どこに寄付すればいちばん役に立つのか」「寄付をしたお金は、実際には具体的に何に使われるのか」などの疑問の声があるのも事実です。そんな声に答えるかのように金融機関で初めて公益団体への寄付を目的とする「社会貢献寄付信託」ができました。まだ聞きなれない言葉ですが注目度は高く大反響です。
今回はその社会貢献寄付信託について、この商品の先駆者である住友信託銀行リテール企画推進部商品企画課の品田英一郎課長にお話をお聞きしました。

人間の優しさ、暖かさを社会貢献活動に結びつける

柏木「社会貢献寄付信託(愛称:明日へのかけはし)」は、住友信託銀行が独自に開発され、取り扱いを始められたそうですが、これはどんな内容なのでしょうか?

品田 お客様が信託された金銭を、毎年、一定割合ずつ公益団体へ寄付する金銭信託商品で、寄付先は、当社があらかじめリストアップした団体一覧からお選びいただけます。寄付した後は、寄付先の団体から活動実績の報告が受けられますので、寄付したお金がどう使われたのかを知ることができます。

柏木 一言でいえば、社会貢献活動に取り組む団体への寄付を目的とした信託商品ということですね。

品田 そうです。信託のスキームを活用したこの商品を通じて寄付することで、地球の生態系を守ったり、がん撲滅、あるいは紛争地帯の医療に従事する医師団などの活動を継続的に支援しようというのが目的です。寄付が目的の商品ですので、金銭信託の元本は、すべて寄付先に送金されます。
「社会貢献意識」や「寄付の慣習」などがもっと広がっていけばいいなとの想いから、この商品をスタートさせました。

柏木 大事なお金を寄付するのですから、少しでも有効に活用してほしいですよね。「明日へのかけはし」は、どこに寄付するかを、自分で選ぶことができのですね。

品田 寄付先は、「環境」「医療」「海外支援」「災害復興」など9つの分野から各1団体をリストアップしています。」選定する際に一定の基準は設けておりますが、あくまで当社独自のものです。社会貢献活動をしたい方でも、自分で的確な寄付先を選ぶのはむずかしいと思います。日本にはさまざまな公益団体がありますが、「どこに寄付したらよいのかよくわからない」という方々の一助になればよいですね

柏木 信託銀行がリストアップしてくれるのなら安心ですね。でも実際に寄付したお金がどう使われたのかを知ることはできるのでしょうか?

品田 各団体の活動方針や特徴、活動内容は本商品の寄付先一覧冊子に掲載しているほか、寄付した後は、寄付先の団体からも定期的に活動状況の報告が受けられます。ですので、「せっかく寄付しても何に使われたのかわからない。使途不明になるのではないかと不安だ」という心配はありません。
具体的な活動内容を報告してもらえるので、納得感が高いのではないかと思います。

柏木 具体的にはどのように寄付するのでしょうか?

品田 たとえば100万円お申込みいただいた場合、毎年11月に20万円ずつ、5年間寄付先に送金されます。よく、その年は寄付したけど、それ以降の年は興味が薄れてしまった、タイミングを逃してしまったという方もいらっしゃいますが、この仕組みなら、最低5年間は、自動的に寄付が続けられます。お申し込みは10万円以上からきますので、年2万円から寄付する形になります。

柏木 5年間、寄付し続けるのですから、その団体の活動状況に興味が湧くし、それがまた、そこの活動意欲を促進させるはずですね。長期間、団体の活動を見守ることができるのなら、寄付のしがいもありますね。

品田 一度、寄付したらそれで終わりというのではなく、継続的な支援や取り組みが重要だと思います。

柏木 でも、一度寄付先を決めたら、5年間ずっと、そこに寄付し続けなければいけないのですか?

品田 そんなことはありません。
活動報告などを見て、自分が考えていた使われ方がされていないと感じられたり、「別の活動をしている団体や他の方々を支援したい」とお考えになったら、毎年変更することもできます。
寄附金控除も受けられ、税制面でもメリットがあります。

柏木 ところで、財務大臣が指定した地方公共団体、特定公益増進法人などに対し寄附金を支出した場合には、寄附金控除を受けることができますが、「明日へのかけはし」の税金控除はどうなっていますか?

品田 本商品でリストアップしている寄付先は、「寄附金控除」が受けられる団体なので、寄附金控除の対象となります。寄付先から送られた領収書を添付のうえ、確定申告することが必要です。国税庁のホームページの寄附金控除の計算方法をみますと、「その年に支出した特定寄附金の額の合計額」と「その年の総所得金額等の40%相当額」のいずれか低い金額-2000円= 寄附金控除額」と記載されています(所得控除の場合)。また税制改正で税額控除も可能になりました。それぞれの詳しい計算につきましては、税の専門家などにご確認いただければと思います。

柏木 寄付する方にとって、それ以外のメリットはありますか?

品田 この商品は元本保証で、5年間で元本の全額が寄付されます。ですが、金銭信託の収益だけはお客様の口座に入金されます。
とはいえ、金銭信託の利率はわずか年利(0・04%:2013年10月7日時点)ですので、運用商品として考えるには無理があります。あくまで寄付を目的とした商品と考えていただきたいですね。
一部の団体に限りますが、本商品を通じてのみ、特別なものがもらえるという特典もあります。

一過性の「義援金」に終わらず長続きする支援で社会変革

柏木 金利よりも、社会貢献の一助を担う役割のほうが大きいですね。アメリカでは社会的に寄付が普及していますが、日本では寄付という概念が、まだ浸透していませんね。そんな中で、「社会貢献寄付信託」は注目度が高く、多くの反響を呼んでいると聞きましたが?

品田 2011年5月から10月までの半年間で、数千万円が集まりました。お客様からの問い合わせも多く、関心の高さを非常に感じております。

柏木 どのような方が申込まれているのでしょうか?

品田 60歳前後から90歳代までが多いですね。信託銀行では、従来より公益信託や特定贈与信託などを通じて比較的多額の「他益目的」の商品を提供してきていますが、いわゆる一般個人向けの公益目的商品は初めてであり、どこまで広がる、我々自身もわからないところではあります。
本商品を通じて寄付をなさる60 歳前後のお客様は、初めて寄付をなさる方が多く、10万円ほどから始めるケースが多いようです。80歳以上になると、過去にも寄付の経験があり、残されたご自身の資産を社会で有効に活かしてもらいたいというお気持ちが強いようです。中には数百万円お申し込みをされるケースもありました。

柏木 東日本大震災を例にしても、たとえば学生などの場合なら、実際に被災地に行ってボランティアに従事する方法もありますが、働いていたら、なかなか時間が自由になりません。定年後なら自由な時間ができますが、わざわざ被災地に行くとなると、体力的にも厳しいですね。「何か社会の役に立ちたい」という気持ちがある方によっては、10万円というのは、寄付しやすい金額ですね。寄付先の中で、特に人気のあるのはどんなところですか?

品田 2012年は東日本大震災が起きましたので、被災地で活動するボランティア団体やNPOを支援する団体、また、環境や海外の医療、人道支援を行なう団体などに寄付の指定が集中しているように思えます。

柏木 御社が「社会貢献寄付信託という信託商品を開発されたのは、先見の目がありますね。今後は、このような商品が普及するのでしょうか?

品田 日本でも今後は欧米のように寄付の意識が浸透していくはずです。そこで他行に先がけて商品化しましたが、他行でも同様の商品がどんどん出て、寄付という意識がもっともっと広がるといいですね。平成23年度税制改正において、個人の寄付を後押しする観点から寄附金税制が拡充され、「特定寄附信託制度」が創設されました。近いうちに、「特定寄付信託」という商品が商品化される見込みなので、信託銀行の取り扱いは増えると思います。

柏木「特定寄付信託」とは「寄付はしたいけれど、多額の寄付をしたら老後の生活が不安」という方のニーズも満たせる仕組みだと聞きましたが。

品田 当初信託元本の30%を上限に、個人年金のような形で、個人が毎年一定割合ずつ受け取れるというのは、「特定寄付信託」の仕組みの特徴の1つだと思います。また、利子所得に所得税が課されず、契約期間中に死亡した場合は、信託財産の残りすべてを寄付する点なども特徴ですね。

柏木 しかし、同時に詐欺まがいのことが現れるかもしれませんね。いまでも寄付を募る団体の中には実在しない場合も少なくありません。国税庁のホームページには「東日本大震災の被災者支援活動をする認定NPO(特定非営利活動法人)法人の寄付金について国税局長の確認を受けた認定NPO法人一覧」がありますが、それは14団体しかありません。寄付にまつわる詐欺に巻き込まれないためにも、国税庁や財務省、内閣府の「NPOホームページ」で確認する必要があるようです。

品田 せっかくの寄付なのですから、困っているところに行き届いてほしい。社会貢献が注目されている時代だからこそ、しっかりとフィルターをかけ、〝活動内容を自ら見極めて〟寄付先を選んでほしいものですね。

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