労働者派遣法改正で派遣社員が急増する?!派遣社員の能力をいかす方法

2014年03月26日

日経BIZアカデミー
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労働者派遣法改正で派遣社員が急増する?!
派遣社員の能力をいかす方法

労働者派遣法改正案が3月11日に閣議決定され、ますます派遣社員が増加することが予測されます。
「1人の派遣社員に対して3年」という期限に対応するため、会社は3年ごとに派遣社員を交代させるでしょう。
これまで派遣社員との関わりが少なかった人も、これからは無関係ではすまされなくなるかもしれません。
派遣社員がやっと慣れてきたと思ったら新しい派遣社員に入れ代わるのです。
派遣社員の能力を活かせないどころか、派遣社員とのトラブルで人材ビジネス会社に契約違反料金を支払った例もあります。
今回は短期雇用の派遣社員でも能力を活かす方法、注意点を生活経済ジャーナリストの柏木理佳(かしわぎ・りか)氏に伝授していただきます。

■派遣社員にお茶くみを依頼したら契約違反の罰金を支払うことに
契約書以外の仕事は頼まないこと!

「契約業務以外の依頼は別料金になることがあります」
「部下の女性が自分の仕事しかしない。頼んでもミスが多い」と、企画部の50歳の課長は細かい雑用や他部署のサポートまで全部自分でしょいこんで、
いつもパニック状態です。いくら夜中まで残業しても、仕事の効率は悪くなる一方です。とうとう「派遣社員を付けてほしい。細かい仕事まで手がまわらない」と総務部に悲鳴をあげました。
 人材ビジネス会社から派遣されたのは優秀な40歳の女性です。課長は「彼女は仕事ができるから助かる」と、コピー、来客の対応、電話でアポイントの変更など、どんどん任せていました。
 ところが、3カ月後、人材ビジネス会社が、契約違反だからと契約時の給料以外の請求額を提出。
契約書には、「業務内容には、企画部におけるアシスタント全般業務、それ以外の業務の依頼は契約違反で別料金になる」と書かれています。実は課長が依頼した来客へのコーヒー出しや雑用などは企画部ではなく他部署の対応だったため契約違反だったのです。
 
別のフロアー(階)にある総務部の担当者は、外資系企業などに派遣している人材ビジネス会社を選び、ずば抜けて優秀な女性を探してきたのです。
課長からは「雑用をしてくれる人材がほしい」とだけ言われ、肝心なことについては明確に依頼されていません。

 この部長は本来、悪い人ではないのですが、忙しくなると周りが見えなくなります。こんな経験は誰にでもあるのではないでしょうか。少しのコミュニケーションをおろそかにしてしまうと、それが重なり悪循環に陥ります。
 課長が仕事を与えている間に、能力の高い彼女は疑問を持ち始め、人材ビジネス会社に「うかがっていた仕事内容と違います。いつ企画の仕事をさせてもらえますか?」とクレームの電話を入れていました。彼女からしてみれば、てっきり人材ビジネス会社を通して、自分の希望が課長に伝わっていると思っていたのです。「なぜ、この課長は自分の嫌がる仕事を押し付けるのか? 企画以外の仕事ばかり。なんで? 私のことが嫌いだから」と、どんどん不満がたまる一方だったのです。
女性はうまくいっていない場合、ついエモーショナルになりがちだと前回お伝えしました。個人的な感情とつなげてしまいがちで、嫌がらせでしているのかととらえてしまう傾向があることも注意しておきましょう。

 彼女の希望の仕事内容=契約書に書かれている内容そのものです。彼女からしてみると、課長が十分読んでいると思うのも当然でしょう。彼女は、大手企業での一般事務の仕事に物足りず、企画の仕事をしたいために、わざわざ派遣社員として登録していたのです。
 課長は、面接の際に、企画部署のアシスタントとして彼女の能力については質問し確認しました。しかし、契約書を細部まで目を通して細かい業務内容の確認まではしていませんでした。もちろん、彼女の夢や希望などは聞いていません。例えば、初日にランチをご馳走するなどして、仕事の合間に少しでもコミュニケーションをとっていれば、彼女は人材ビジネス会社にクレームを入れる前に、直接相談していたでしょう。

 3年ごとに派遣社員が新しくなれば、その都度、業務内容を示した労働契約書は読み直すことです。できれば人材ビジネス会社と派遣社員と直接仕事を依頼する可能性のある人全員で一緒に契約書を読む時間として打ち合わせをもうけることです。例えば、派遣社員の前任者が、たまたま業務内容の範囲以外でも対応していただけで、そもそもは範囲外ということもあります。契約書をよく読み、雑用でも違反に当たる内容とそうでない内容を把握することです。
結論:派遣社員に依頼する前に業務契約書を熟読すること

私的な手伝いをさせた?!と厳重注意

誰もしたくない雑用の依頼方法
 派遣社員の女性がタイプだからと、ランチに誘ったり、夜の接待客との席に同席させる男性もいました。調子のいい営業部の47歳の上司男性に対して、最初は気軽に応じていた派遣社員の女性ですが、あまりに頻繁なので嫌気がさし、勇気を出して、食事会を断ることにしました。
派遣社員は、夜の食事会を断ったので、仕事はこれまで以上に一生懸命やろうとしていました。
 ところが、一度、夜の食事会に参加すると、その影響はどこまでも続きます。食事会で接待したことのある外部の人が会社を訪問すれば、当然、お茶を出すなどの応対は彼女にまわってきます。訪問時に上司が営業の電話対応で忙しければ、その間は、その接待、対応に追われます。一度顔を合わせているため、外部の人は気軽にコピーの依頼や、携帯電話の充電などまで雑用を依頼してくるのです。
 でも、派遣社員の彼女は、契約を打ち切られたらどうしようと、断りたくても断りづらく、いやいや彼らの依頼に応じていたのです。また、上司は、彼女の帰宅前に「残業するから自分のコーヒー、お弁当の買い物をしてきて」などとつい私用まで依頼。

 上司が彼女の派遣契約を3カ月更新を決定した直後、我慢の限界が来た彼女は人材ビジネス会社に報告。上司は総務から呼び出しを受け、「私的な手伝いを派遣社員にさせた」「今後、派遣社員の契約をやめるか?」などと厳重注意を受けたのは言うまでもありません
しかし、調子がよく臨機応変に対応できる彼は、彼女に対して、大いに反省していることをアピール、十分に謝罪し、一緒に契約書を再度読み直しました。忙しく幅広い仕事を担当している上司は、依頼できる仕事内容が大幅に減ると困ります。だからといって、契約内容に縛られていたら彼女に気を使い何も頼めなくなります。そこで、「僕は契約書など細かいことを把握することは難しく、業務内容に該当するかしないか毎回判断できないこともある。その場合、その都度聞くから教えてほしい」とお願いしたのです。確かに業務契約内容とそうでない仕事内容とはっきり分けられないグレーゾーンもあるでしょう。
 そもそも秘書やアシスタントに女性が多いのは、女性は自分で決断するよりも、いちいち報告したり説明することが好きだからです。逆に政治家の秘書に男性が多いのは、全てを任せられて自分で決定することが多いからです。つまり、いちいち報告することが好きな女性は、いちいち逆に了解を得られることは、マメに気にしてくれていると思いうれしいことなのです。依頼する側も、契約書以外の雑用に関しても、承諾を得たことで自分を守ることができます 。

 ご機嫌取りのようですが、契約以外、あるいはグレーゾーンの仕事内容にはどんな小さな雑用でも、了解を得る必要があります。「どうしても手が離せず、海外からの電話を待っている。私的なお願いかもしれないけど、僕の代わりに会議で使う赤色の画用紙とペン、ついでに弁当を買ってきてもらうことはできないかな? 君のお菓子など好きな分も買ってかまわないから。難しければ本当のことを言ってね」などと。
 彼のやり方はすべて正しいとは言い切れませんが、これも一つの方法です。派遣社員は、アシスタントだからと何でもやってくれるのが当然と考えないことです。ご機嫌取りをしなければ、誰もしたくない雑用を一生懸命してくれません。
結論:グレーゾーンの仕事については、いちいち了解を得ること

数カ月~3年で代わるかもしれない派遣社員をどう活用する?
派遣社員を社員と同然に考え味方に付けること!

「完璧に仕事をこなし1言えば10まで対応してくれる派遣社員と、そうでない派遣社員がいる」と、愚痴を言っている社員たちがいました。このように考えている人が多いようです。でも、それは大きな間違いです。同じ派遣社員が、毎回どんな会社に行っても同じように完璧に仕事ができるでしょうか? どんな上司に対しても1聞けば10分かるはずがありません。派遣社員が優秀な人材になるかどうか、それは頼む人の能力なのです。
 海外出張の多い研究所の43歳の主任男性は、派遣社員のアシスタント女性に全てを任せています。不在が多い彼には、アシスタントは彼女しかいません。彼女を信頼するしかないのです。その信頼する気持ちは伝わります。彼女は、社内の会議や情報、外部からの電話の伝言などあらゆる大事なことを出張先に連絡してくれるばかりか、機転をきかせて自分に代わって対応してくれます。

 それは、なぜでしょう。彼は出張から帰国するたびに、彼女にお土産を購入して彼女の存在なしでは困ることを説明しています。また、数カ月に1回は数人でランチをとりながら、会社の内情、今後の方向性などをディスカッションしています。つまり、派遣社員だからといってアシスタント、ただの雑用係として考えているのではなく、積極的に一社員として会社のことを知ってもらおうと努力しているのです。ランチの場で情報を共有することで彼の考え方や方針も理解できるようになります。1言えば10分かる人になり、臨機応変に対応も可能になるのです。

数カ月間の派遣かもしれない、そのために費やす時間がもったいないと思えば、派遣社員にも伝わります。数カ月で契約切れになるリスクがあっても、自分のことを大事に思ってくれている人に対して一生懸命働かないわけがありません。モチベーションが違えば、雑用もスピーディに終わらせてくれます。そして、さらに踏み込んだ仕事も依頼できるようになります。
 もしミスがあっても、次にこのような場合があったらどのように対処するのか、分からなければいちいち質問するように伝え、ミスに対して怒るのでははなく、努力しなかったことに対して怒るのです。
 派遣社員にしてみれば、短期間の雇用でしかないかもしれないのに、雑用に対して一生懸命働こうというモチベーションが上がるはずがありません。景気が悪い時には我慢して何でも働く派遣社員もいるでしょうが、少しずつ景気がよくなれば、転職のための経験を積む経歴書作りに短期間の派遣を選ぶ人もいるでしょう。それぞれの希望を聞いてあげるだけで、「ただ雑用を押し付けられている」のではなく、「もしかしたら少しは将来に役に立つかも」と少しでも思ってもらえます。
結論:派遣社員のモチベーションを上げて効率を上げる

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