世界トップ3を占めた中国の銀行が、 再びランク外へ転落する可能性

ダイヤモンドオンライン 「とてつもない中国」
2009年03月03日
 米国金融危機でシティバンク、バンク・オブ・アメリカなど米国銀行が壊滅し、米国では銀行の国有化が話題になっている。今年に入って中国株のみが上昇、中国経済の存在感が増している中、とうとう中国の銀行が世界の銀行のトップにのぼりつめた。香港に上場している中国工商銀行が、時価総額で世界第1位になり、トップ3位は中国が独占した。
 中国では金融危機の影響は、銀行の業績全体の2-3%にしか及んでいない。中国の四大国有銀行といえば中国工商銀行、中国建設銀行、中国銀行、中国農業銀行であるが、そのうち農業銀行以外の3行がなんと世界のトップ3にランキングされた。1位は中国工商銀行で時価総額は1839億米ドル(約17兆9519億円)、2位が中国建設銀行1084億米ドル(約10兆5817億円)、3位が中国銀行1072億米ドル(約10兆4646円)である。六大国有銀行の一つ中国交通銀行も10位に付けた。(3月1日現在のレート)
 一方、金融危機のダメージは少ないといわれていた日本の銀行は、三菱東京UFJ銀行が、かろうじて8位にランキングされるにとどまった。時価総額は約5兆2816億9100万円である。
 2005年度に三菱UFJフィナンシャルグループが4位を占めた時の時価総額は18兆4461億円だった。しかし、金融危機で三菱UFJフィナンシャル・グループなど三大メガバンクが喪失した時価総額は合計2兆5500億円に達し、収益が悪化している。日経平均株価は、2月20日には、昨年10月27日のバブル後安値7162円に次ぐ安値水準にまで落ち込んだが、特に三菱東京UFJ銀行は半年前の3分の1の400円台にまで下がっている。
 不良債権が多いなど批判が高かった中国の銀行が上位3位を独占するなんて、米国の金融危機がなかったらありえないと思うかもしれない。しかし、中国の銀行は世界のどこの銀行よりも確実に、そして早急に改革を促進してきたともいえる。
 4大国有商業銀行の不良債権比率は03年末の20.4%から05年末には10.5%に低下した。さらに主要国有銀行では2007年6月期で不良債権率は3.23%までに低下した。リストラ、不良債権処理、外貨準備高、公的資金225億ドルなどの資本注入、株式会社化、株式市場への上場などの矢継ぎ早の改革により目に見える成果をあげた。世界的なバブルで浮かれている中、中国政府による戦略が成功したことは認めざるを得ない。
中国の銀行危機は住宅バブル崩壊が決する
 では、中国の金融はいつまでトップの座を守り続けるのだろうか? 米国経済が復活したら中国の銀行は再びランキング外に出るのだろうか。ちなみに世界の銀行の時価総額ランキングでは、4位は英国のSHBC、5位は米JPモルガン銀行、米ウェルズ・ファーゴ銀行、スペイン国際銀行、三菱UFJ銀行、米ゴールドマン・サックス銀行と続いている。
 確かに今の中国の銀行は、有り余るキャッシュフローを使って世界の銀行への資金提供や再編を求めることもできる。しかし、中国が怖いのはもはや、国有化、再編などによる米国銀行の復活ではない。
 中国の銀行株がこれから下落しうる唯一の原因は住宅バブルの崩壊である。すでにここ数年、中国の住宅バブル崩壊がささやかれてきた。上海の7000万円マンションが半額になっているなどニュースになった。しかし、全体的にみれば、北京五輪後、予想されていたほどの大きな打撃はなく、ソフトランディングに留まっている。
 実際、中国のGDP約330兆円に占める不動産業の割合は10分の1以下の約13兆円ほどしか占めていない。さらに、中国の土地使用権は日本の「定期借地権」と似ているが、居住用地70年以下、工業用途50年以下などの借地期間がある。完全に個人が土地の売買をできる段階ではない。言い換えれば、政府が政策によって不動産マネーをコントロールしやすくなっている。完全な市場経済に移行していないということは、住宅バブル崩壊を避けやすいということでもある。
 現地で北京万科企業などを訪問取材すると、「中国人では親戚から金を集めてマンション購入資金にする若者が多く存在するため、日本ほど銀行から借り入れていない」という。
 とは言っても、銀行にとってみればバルブ崩壊で貸した金が戻ってこなくなるのは確かだ。もともと低かった資金回収率がやっと増加しているというのに、再び低くなることが懸念される。不良債権比率が再び増えるという予測もできる。貸し渋りが進むことは避けられない。
 世界トップの座についた中国の銀行だが、住宅バブル崩壊の懸念がなくなるまでは、本格的な民営化を進めることはなく、さらなる経営強化を推し進めていくのだろう。
 結果的に、今後の世界の金融の流れは、米国金融の復活ではなく、中国住宅バブル崩壊が左右することになるだろう。

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