中国米中会談 A株

「月刊 産業と経済」2007年7月号
2007年07月01日
今後の中国株の動向
米中会談で株価は下落後、上昇
 上海市場の上海総合株価指数の急落がきっかけで世界同時株安が発生したのが2月である。
 株価はあっという間に元に戻った。その株価は短期間に急騰し過去最高を上回るほどの過熱気味である。上海指数では一年間で2.5倍上昇した。
 過熱しすぎている中国株を懸念して、2月の上海発世界同時株安が発生したと同じようなことが、夏ごろに起きるのではないかとささやかれるようになった。
 そもそも、この上海発世界同時株安は、第一回米中戦略経済対話の直後に起きた。このときにすでに計画が話されていたことは間違いないだろう。
 と、すれば次に注目なのが、5月下旬にアメリカに行われていた第2回米中戦略経済対話である。
 中国側代表の呉儀副首相のにこやかな挨拶で円満な成功をアピールしたことに対して、アメリカ側代表のポールソン財務長官は、人民元問題や知的財産権問題で大きな進展がなかったことに対して不満をあらわにしていた。
 貿易不均衡を是正するため航空産業や金融、サービス分野で発展があった。特に航空産業においては、米中間の民間航空便を1日10便から2012年までに23便に拡大、新航空路はアメリカの国際空港から北京、上海、広州に開設される予定でアメリカの航空会社に50億ドルの利益をもたらすことが約束された。

 

円高、人民元高へ
 対中貿易赤字が昨年過去最高に達する中で、来年のアメリカの大統領選挙が行われる。貿易赤字を減らすためアメリカの政治の強さを海外にみせつけ、国内の人気も挽回しなければならない。過去の大統領選挙の前の年は、円高ドル安の傾向があるのもそのせいだ。さらなる人民元切り上げの圧力も強化されることが見込まれる。
 しかしながら、外貨準備高が世界一を誇る中国は、その1兆2000億ドルを米国債などに投資している。それをいっきに売却すればドル安が進むだけでなくアメリカの金利も上昇する。加えて急激に大量のドルを売却することは、世界の金融市場を混乱させることもできる。
 したたかに中国は切り札を持ち続け、そして世界的に権力を拡大していたのである。
 調整局面の後は、上昇が期待される中国株そんなことより、投資家にとってはもっと大事なことがある。
 中国の証券市場開放などの金融サービス分野では、外資系証券会社の参入規制の撤廃や業務範囲の拡大で合意した。
 中国政府が国内株への投資を認めている適格海外機関投資家(QFII)の投資枠も、100億ドルから300億ドル(約3兆6000億円)に引き上げられる。
 つまり、A株(人民元建て株式)市場への外国人の参加が拡大したということだ。
 これまで唯一、人民元取り扱いであるA株は、中国人しか購入することができなかった。それが外国人に開放されたのだが、規制が非常に強かったためそんなに株価には影響はなかった。日本人は大手の証券会社のみが販売することができるA株が組み入れられた投資信託のみを通して購入することだけが許された。個別の銘柄はまだ購入できない。
 そして、販売してもすぐに応募を締め切られていた。
 その投資限度総額が300億米ドルに引き上げたということは、なんらかの形で多くの海外の機関投資家なども注目するだろう。
 アメリカの圧力が強まり、人民元が切り上がることが見込まれる中で、外国人投資家が保有しやすくなったA株が上場し、連動するB株にも好影響が期待される。
 今回の米中戦略会談には、中国人民銀行の周小川総裁、中国銀行業監督管理委員会(CBRC、銀監会)の劉明康主席、中国保険監督管理委員会(保監会)の呉定富主席、中国証券監督管理委員会(CSRC、証監会)の尚福林主席らも参加した。
 株式市場の動きはこれだけのメンバーによって戦略的に動くことが予測される。
 ポールソン財務長官の「米中両国はいずれも、全世界に対する責任がある。積極的かつ建設的な役割を果たさねばならない」と述べた発言、金融引き締め効果や経済引き締め効果の薄い中国に対してアメリカ連邦準備制度理事会のグリーンスパン前議長の「いずれ劇的な収縮が起こる」と警告している。
 中国の知的財産権の問題も残されている中で、人民元切り上げだけでない株式市場を開放することは中国経済の本格的な市場開放の一歩になる。
 中国株の動きに注視しながら、政策を見極め、タイミングを計ることが大事なポイントである。
 1999 年頃から「走出去」(zou chu qu)と呼ばれる、中国企業の海外でのM&A が頻繁に行われ始めた。中国の場合は、資源・開発、技術力やブランド力の獲得、人民元切り上げへの対策、国内の過剰投資の解消、貿易摩擦に対応することを目的としていることから政府も企業の対外進出を奨励している。欧米を始め投資する多くの国は、投資先の地域の比較優位を活かした上での投資をしているが、人件費が安い中国の場合は、グローバル企業の育成、経済摩擦の回避という利点を考えざるを得ない。中国企業が国際市場に進出することで世界経済にも与える影響は大きいといわれているが、同時に問題点も多く、実際には案件に対する失敗率も高い。中国企業の海外投資の場合は、競争優位理論が想定している競争力の源泉よりも資源調達という視点で行われているため、アメリカ、南アフリカなどからの批判も増加している。しかも中国が自国の資源の獲得のために海外の企業の買収を支援しているということになり、企業買収を繰り返すことで中国の孤立化が進むとともに国内の海外市場への開放が迫られることになる。
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