M&Aで決まる今後の中国経済

「月刊 産業と経済」2006年12月号
2006年12月01日
柏木理佳が注視する中国経済

 

資源獲得にあせる中国
 「走出去」(zou chu qu)と呼ばれる、中国企業の海外でのM&Aが頻繁に行われ始めた。
 中国経済を成長させなければならず、それに欠かせない資源の開発には海外の石油関連企業を買収するのが手っ取りばやい。
 それだけではない。技術力・ブランド力の獲得、人民元切り上げへの対策、国内の過剰投資の解消、また貿易摩擦に対応するためにも政府が推奨している。

 

アメリカ・南アフリカによる批判
 しかし同時に問題点も多く、実際には案件に対する失敗率も高い。中国企業の海外投資の場合は、競争優位理論よりも資源の調達のために行われているため、アメリカ、南アフリカなどからの批判も増加している。

 

増える対外直接投資
 中国の対外直接投資は、2001年に69億ドルに急増したが、1999年に中国政府が「走出去」の戦略を提起したこと、「第10次五ヵ年計画」に対外直接投資拡大方針として明記されたことに加えて、2001年に世界貿易機関(WTO)に加盟したことなどが原因である。
 商務部と国家統計局による「2005年度中国対外直接投資統計公報」(金融分野を除く)によると対外直接投資額は前年比123%増の122億6千万ドルに上り、2005年度末時点での累計投資額は572億ドルに達した。

 

政策
 第10次五ヶ年計画にも取り入れられた「走出去」(中国企業の海外進出)、2002年第16 回共産党大会でも「走出去」戦略の実施を評価した。また2003年10月、国家外貨管理局は、「国家外貨管理局が海外投資における外貨管理改革問題をより一層深化することに関する通知」を公布、商務部に対外進出を担当する部署まで置いている。
 このような背景から中国企業は、1)中央政府や地方政府に直属する貿易専門の企業や独占的な競争優位を持つ企業、例(国対外貿易運輸中国糧油食品輸出入などの貿易関連の国有企業、2)製造業を中心とした研究開発能力、ハイアール、TCL など、3)国有企業の金融や大規模なサービス業、中国遠洋運輸、中国建設などにわかれている。

 

問題点
① 収益率が低い
 中国の対外直接投資収益率は0.35%で、韓国の1.35%、日本の5.03%、台湾の1.92%、香港の5.72%に比べてもかなり収益率が悪いことがわかる。
② 資源獲得は現地の反感に
 中国ではODA(政府開発援助)として欧米・日本から多くの資金援助がされているのにもかかわらず、資源獲得のために必死で買収を進めている。
 急に中国が資源を求めて焦って大規模な対外直接投資をすることは多くの国に反感を持たれ望ましいことではない。
③ 孤立化
 中国経済のバブルがはじけた場合、世界から孤立することも懸念される
④ タックスヘブン
 ケイマン諸島、香港、英領バージニア諸島など従来からの租税回避地における投資額が全体の81%を占めている。
 このようなタックスヘブンを省くと本来のM&Aの金額は少額で納まる。
 多くのブラックマネーの流動は世界経済をも揺るがすことになりかねない。
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